毎月第2木曜日、岳南朝日新聞に母力コラムを掲載いただいています。 コラムタイトルは「母に必要なチカラって何だろう?」です。
12月はメンバーのかなさんが~お父さんの育児参加をテーマに書きました。以下より全文お読みいただけますので、ぜひ読んでみてください。
お父さん、せっかくだから育児参加してみませんか?
1. 母のスタート地点
今からかれこれ六年前になります。私は一冊の小さな手帳を受け取りました。それは母子健康手帳です。保健師さんの説明を聞きながら、ぺらぺらと開いてみると、中にはたくさん文字が並んでいたり、自分が書き入れたりするところがあり、筆を持つのが苦手な私は少し戸惑ったのを覚えています。カバーをかけられた手帳に小さな白い点が写ったエコー写真をはさみ、くすぐったい気持ちでバッグにしまいました。母子健康手帳を開くと、妊娠中の経過や生活のアドバイスから、分娩の記録や赤ちゃんの成長や予防接種、起きやすい事故や心肺蘇生法まで、赤ちゃんとの生活の一番基本的なことが詳しく書かれています。私が受け取った母子健康手帳には、およそ四十ページをこの説明に使ってありました。
母子健康手帳を受け取ったことのあるお父さん、お母さん、この四十ページをすみずみまで読み込んだことがあるという方、どのくらいいらっしゃるでしょうか。書くのも読むのも苦手な私は、この手帳に大切な章がしっかり載っていることにも気付かず、あっという間に十月十日を過ごします。
2. 父のスタート地点
出産を無事に終え、産院を退院し、いざ赤ちゃん第一優先の日々が始まりました。飲むのも飲ませるのも下手っぴな授乳、夜泣き、ゆるゆるお通じがおむつからはみ出してしまうなど、すべてに悪戦苦闘です。おむつも替えて、いつも通り授乳もできたのに、息子が泣いている理由が分からないこともしばしば。抱っこであやし続け、やっと眠った寝顔をみながら、疲れて寝ちゃうほど泣かせてごめんねと、徐々に気持ちも落ち込んでいきます。お昼の情報番組を見ているだけで、ほろほろと涙が流れます。私の心の中の不安や疲労を言われなくても読み取って労わってよと、夫に無理難題を突きつけることもありました。そんな時、ふと我に返るタイミングが来ました。夜泣きに付き合っている時、隣ですやすや眠っている夫の寝顔を見た瞬間です。
「あれ?彼は父になって、どんな子育てへの関わり方がしたかったんだろう。このまま蚊帳の外でいいのか?どうしたらお互いに気持ちよく役割分担ができるだろう?」
この時から、父となった夫が気軽に育児参加できるように、色んなことをお願いしてみることにしました。入浴やお着替え、おむつ替えや日光浴など、ちょっと頑張ればできそうなことからはじめてみました。気を付けたことは、帰宅後や休日を選ぶことと、夫の時間に余裕があるか確認することです。時間に余裕がある時なら、断りにくいかなと思ったからです。ひとつずつできる育児を増やしていった夫は、父として自信をつけ今では共働きの我が家の即戦力となっています。
3. 母子健康手帳は妊娠・出産の教科書
さて、教科書となる母子健康手帳に載っていた、私が妊娠中には気付けなかった章はなんだったのでしょう。それは、夫の役割、お父さんの役割という章でした。パートナーや赤ちゃんのことを気にかけるようにしたり、自分たちがどんな親になりたいのか、役割分担について妊娠中からよくコミュニケーションをとったりしましょうという内容でした。妻のおなかに命が宿ったことは素直に嬉しいけれど、自分にはなんの変化もなく、どうしたらいいか分からないよ。と思っているお父さん、まずは会話することからはじめてみましょう。「今日の妊婦健診、どうだった?そういえば、最近体調どう?母子健康手帳、見てもいい?手伝えることある?」見回してみたら意外と会話のきっかけが転がっているものです。そして、話しかけられると女性はいつでも嬉しいものです。
私たち女性も、妻として、母としてステップアップするいいチャンスです。自分が選んだパートナーはどんなことが得意で、どんなことが苦手なのかよく観察してみます。得意そうな家事や育児は、手渡してみましょう。最初はきっと完璧にこなすことが難しいけれど、何回かやってみたら相手にも少し自信がついてくるはずです。お父さんから、これやるよと言ってくれたら目標達成です。ひとつ分担できましたね。これを重ねていきましょう。もちろん、「やってもらえて助かったよ」と伝えることも忘れずにお願いします。
生活ががらっと変化する妊娠、出産は夫婦にとって一大プロジェクトです。いままで与えられていた役割の再構築や、会社で新しいプロジェクトを任されるような状況の変化だと思います。夫婦でチームとなり、プロジェクトを成功させましょう。とてもすぐに結果が出る仕事ではありません。ふと気付くお子さんの成長が、ふたりのプロジェクトの成果です。母として、父として、母子健康手帳を教科書にして、育児をしてみてください。
文・写真:清家香奈
Comments