岳南朝日新聞3月掲載されました
- 母力
- 3月30日
- 読了時間: 4分
3月は 伊藤 千恵が
『見て感じて体験。中高生が子育てを学ぶ』をテーマに書きました。
以下より全文お読みいただけますので、ぜひ読んでみてください。

「見て感じて体験。中高生が子育てを学ぶ」
●こどもとの過ごし方に正解はない
「赤ちゃんとどのように過ごしたらいいですか?」
こんな質問が子育て支援に関わっていると耳にすることがある。しかし、初めての子育てや、身の回りに小さい子がいない世代であれば、言葉も通じないし、寝転がったままの赤ちゃんと“どのように過ごしたらよいか”という漠然とした不安があるだろう。特に、昔と比べこどもと関わる機会が少なくなったことで、よりそのような声が加速しているように感じる。
もちろん、私もその一人だったと思う。自分は一人っ子で、五人姉妹の末っ子の母。姉妹たちのいとこは十人以上、皆わたしよりも上の世代だった。そのため、親戚の集まりでも私が一番下であることが多く、小さいこどもと過ごしたり、一緒に遊んだりする経験は限りなく少かったため、こどもに対して苦手意識があった。
そんな私も、今や2人の男の子の母となった。メディアとどのように付き合っていくかということも言われている時代、こどもとどのように過ごすかということは私の中でも大きな課題である。しかし、母力向上委員会はありがたいことに、ほぼ全員母親。我が子たちと遊ぶスタッフの様子や、おもちゃを作って遊ぶ様子、声掛けや関わりなど、見て感じて理解することがやっとできたように思う。そう、こどもとの過ごし方に正解はない。しかし、見て感じて体験することが親になったときのヒントになるに違いないと思った。
●遊び体験と子育て体験
2024年年末の冬休み前、静岡県若い世代の子どもや子育て世代との交流・体験事業補助金を活用し、富士・富士宮地区の中高生を対象に「遊ぼう!子育てクラス」を開催した。内容は、家にある新聞紙や紙コップなどを使っておもちゃ作り体験をして、実際に乳幼児の親子とその手作りおもちゃを使って遊ぶ体験をした。月齢や年齢によって、同じおもちゃを見て触る反応の違いや、遊び方の違いがあることがわかり、そして、むしろ遊ばず寝ることに徹する子、母のそばで泣いてしまう子など、こどものいろいろな場面を感じることができた時間になった。将来、保育関係の仕事に就きたいと考える学生が多かったため、こどもと遊ぶ様子も笑顔で明るく、親子とコミュニケーションを図る学生がとても多く、スタッフも一緒に楽しみ充実した時間になった。
そして、そのあとは赤ちゃんの子育て体験をグループごとに実施した。妊婦ジャケットを着て実際に靴下を脱ぎはきしたり、だっこ紐を装着したり、おむつ交換をしたり、ミルクを作ってみたり、とボリューム満点な内容が続いた。学生たちも積極的に体験して、「赤ちゃん人形が重たい」「上手くミルクの温度が調整できない」という上手くできない体験をした学生が多かったように思う。その体験の中で、赤ちゃんを育てる母の身体への負担や、大変さ、小さな命を守らなければいけないという責任を感じていた。
●10年後の未来を描く
講座の最後に、自分の10年後のライフプランを考える時間を作った。その前に少しだけ妊娠や出産に関する知識を提供し、今の生活が自分の将来に大きく影響を与えることを伝え、自分ならどのような将来にしたいかという投げかけをした。ライフプランというと、学生たちも急に現実に引き戻されてしまうようで、筆が進まない様子があった。「そうならなければならない」「そうしなくしゃいけない」そんな空気も感じた。夢を描くということに関心がないわけではなく、臆病になってしまっている様子もあったが「旅行やライブに行く」「アルバイトを頑張る」といった将来の楽しみを具体的に表現する内容がでてくるとスラスラと筆が進む様子がみられた。
●講座を終えて
参加した学生からの感想では「将来を考えるというと難しい気がしたけど、自分の将来の楽しみを考えながらイメージすることができた。」「今まではあまり将来のことを前向きに思えなかったが、この講座を受けて将来が楽しみだと思えた。」という自分の将来について具体的な楽しみを書き込むことによって、前向きに考えることができた学生が多かったように感じる。また、「子育てについて不安もあるけど、周りと協力していけば良いということが分かってよかった。」という、体験を通しての気づきや子育てへのポジティブな意見も聞くことができた。
中高生という、様々な選択を自分で模索し決定していく大切な時期に、このような内容の講座ができてよかったと思う。この講座の中で残るものはそれぞれ異なるが、体験したことが必ず自分の将来につながっていくと思う。若い世代のこれからの活躍が楽しみである。
文責 伊藤 千恵
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