毎月第2木曜日、岳南朝日新聞に母力コラムを掲載いただいています。 コラムタイトルは「母に必要なチカラって何だろう?」です。
5月は塩川祐子が『変動する時代だからこそみんなで笑顔の子育てを』を
テーマに書きました。
以下より全文お読みいただけますので、ぜひ読んでみてください。
【コロナ禍子育て】
コロナ禍の2年、子ども達が育つ環境も様々な変化をしてきました。私自身、娘達が中高生に育っている今でも不安を感じた時間でした。私たち母力向上委員会では昨年度独立行政法人医療福祉機構より社会福祉振興事業助成金をいただき「今を支えて未来を創る子育て環境デザイン事業」に取り組んできました。その中で実施した「コロナ禍1年パパママ実態調査」では県内在住の妊娠期から3歳子育て中の回答者366名のうち47%が精神的健康状態が低い状況にいることがわかりました。約半数という数字はとても大きいと感じました。自由記載にも「初めての子育てがコロナ禍で孤独です」「毎日なんとか生きています」などの声が寄せられました。私たちの拠点を訪れたママからは「他の人がどんな子育てをしているのかわからない」「久しぶりにまともに人と話をしました」等涙ぐまれるなど、孤独と不安を抱えて過ごしている様子が感じられました。
【生まれ続ける町に】
そのような姿を目の当たりにした私たちは、どんな状況でも極力「対面」でのサポートの場を確保しようと試行錯誤してきました。ここ数年の富士宮市内は新たな子育て支援の人・サービス・場所が続々と誕生しています。新しい助産院、ナーシングドゥーラ(産後の生活支援を行う看護職)、居場所、待望の児童館。ママ達が動くことができない状況でも訪問してサポートをしてくれる人、迎え入れてくれる場所、寄り添ってくれる人、他の子育て中の仲間に出会う場所がある。その環境があることは孤独と不安を抱えたママ達の緊張を解き、安心感を与えてくれます。コロナ禍にプラスして少子化時代。財政面からもこれまで当たり前にあった支援が統廃合されたり消滅したりしています。こどもが生まれる町づくり、子どもが育つ環境づくりは益々重要であります。
【子育ての責任はどこにあるか】
先日、全国規模の地域母子保健研修に参加しました。そこでは「虐待とは虐待をする親の問題」と捉えるのではなく、「虐待とは地域社会の問題である」と認識を転換する必要性があるという内容が語られていました。残念なことに未だ社会の中では様々な状況の親に対し、自己責任論で子育ての全ての責任を親に押し付け孤立に追い込む状況があります。それは結果として必要な支援を妨げ、子どもに対するマイナスの影響をもたらします。親を責めるのではなく、その背景を知り必要なケアをすることが予防の手立てとなり、地域社会ができることであると考えます。私自身、初めての子育てで、自分の感情を上手にコントロールできずに娘に怒鳴ってしまっていた頃、子育ての先輩であるご近所さんが娘を散歩に連れ出してくれました。私を責めることなく、共感してもらったおかげで、私は自分は一人じゃないと緊張が解け、子育てに向かうことができました。
【やっぱりみんなで子育て】
前述の実態調査でも「一人で子育てをしなければいけない気がする」という声が届いていましたが、頼り先や相談先がない人、友人を持たない人は特に精神的健康状態が低い傾向が確認されました。母力向上委員会ではこの課題を解決するためにこの5月から0歳子育て中の女性に6回連続講座、ママカレッジを開催します。産後のこころと体を癒し、仲間と出会い自分自身を見つめることで親として一人の女性としての軸をつくるための学びの場です。仕事復帰も見据えている人も多い中、復職前に自己を整えることで自信をもって活躍していただけるようにナビゲートしていきます。
また、同様の取り組みの中で「Co育てアシストプログラム」も誕生しました。これは体験や動画の視聴を通して高校生を中心として子育ての理解を促し、町で出会った子育て中の人をアシストできる人財を増やしていくことで子育てをしやすい環境を構築していくことを目的としています。9割のお母さん達からも、このように子育てを理解し、声をかけ手を貸してくれる人が町中にいたら子育てをしやすいと感じるという声が届いています。
子どもを産む選択、産まない選択もそれぞれありますし、子どもを可愛いと感じる人もいれば苦手な人もいます。ですが、やっぱりみんなで子育てみんなが仲間という想いを持ってもらえる人をこの地域に増やしていくことでこの地域で生まれてくれた命の育ちを応援したい、育む親も応援したいと思います。生まれた子ども達とその周りの笑顔が絶えない地域になりますように。そんな願いを込めてこの2022年度も母力向上委員会は活動を続けていきたいと思います。
文責 塩川 祐子
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