岳南朝日新聞7月掲載されました
- 母力
- 7月30日
- 読了時間: 4分
7月は平川あかねが
【私にとって大事な「作業」~人生を豊かにするために~】をテーマに書きました。
以下より全文お読みいただけますので、ぜひ読んでみてください。

私にとって大事な「作業」~人生を豊かにするために~
【作業療法とは】
みなさんは「作業療法」という言葉を聞いたことがありますか?
ご飯を食べる、トイレに行く、着替える、買い物に行く、仕事をする…私たちの生活はこれら様々な「作業」にあふれ、
作業がその人らしい人生を豊かにしています。
病気やケガで生活上のなんらかの困りごとを抱えた方々が、その人らしい生活を送ることができるよう支援する専門家が「作業療法士」です。
私は大学で作業療法について学び、作業療法士免許を取得しました。現在も2人の子どもを育てながら作業療法士を続けています。
大学卒業後は市内の病院に就職しました。就職先の病院は脳卒中など頭の病気をした患者様が多く、手足に麻痺がある方や
言葉がうまく話せないといった障害を抱えた方にリハビリを提供することが主な仕事でした。
当時は、医療知識はもちろん社会人としての経験も知識も未熟で、毎日悩みながらの日々でした。
大変なことも多かったですが、ひたむきにリハビリに取り組む患者様の姿に勇気をもらい、少しずつできることが増える患者様と喜びを共有できるこの仕事にやりがいを感じていました。
【生活の変化と気づき】
就職後しばらくして結婚、その後長男を出産し1年間の育休をとりました。赤ちゃんとの生活は毎日が発見の連続で、小さい体で一生懸命生きる姿に愛おしさが溢れました。
でも、慣れない育児に不安は尽きず、泣き止まない・寝ない息子を抱っこしたまま途方にくれる日もありました。特に私がつらかったのは、日中息子と二人きりで過ごし、大人と話す時間がないことでした。今まで当たり前に行っていた”職場で患者様や同僚と楽しく会話をすること”が、私にとって大事な「作業」であったことに気づきました。とにかく人と喋りたく、息子を連れていろんなところに出かけました。支援センターや地域の子育てサロン、母力向上委員会の講座など、子育てしているお母さんを応援してくれる場所が地域にいくつもあり、助産師さんや保育士さん、地域のボランティアの方、先輩ママたちと出会うことができました。そのときの悩みや日常のたわいのない話を聞いてもらえるだけで心が軽くなり、家に帰ってからまた前向きに赤ちゃんとの生活を送ることができました。家族だけでなく地域の多くの方に支えられながら子育てできていることを実感できました。
【ハハラッチライターになって】
その後職場復帰し、数年後に娘を出産した際の育児休暇期間中、ハハラッチライター養成講座を受講しハハラッチライターになりました。ライターになって多くのお店や地域の方のお話を聞く機会がありました。地元で長年愛されるお店を経営されている方、目標や夢をもって富士宮で新しい事業にチャレンジされる方など、楽しそうに話される方の話を聞くのはとても楽しく刺激的でした。
富士宮で子育てをしていたからこそ出会えた方々みなさんが、夢や思いをもって活き活きと生活されていて、家庭や地域で役割をもち、多くの誰かの心の支えになっていると感じました。私が今まで出会った患者様も、それぞれ社会の中で役割や大切にしている作業がある一人であること。例え病気やケガでなにか困りごとができたとしても、慣れ親しんだ地域で活き活きと生活できるように支援していきたい。お世話になった方への恩返しのひとつとして、作業療法士として地域に携わっていきたいと強く思うようになりました。
【新しい世界への期待】
「家族のためにご飯をつくってあげたい」、「友人とまた旅行に行きたい」、そんな目標をもって一生懸命リハビリに取り組む方々と、そばで応援してくれるご家族たちが多くいらっしゃいます。そんな方々の生活にもっと寄り添える存在になりたいと思い、今年の夏、大学卒業後から勤め続けた病院を退職し、訪問リハビリの世界で活動することを決めました。新しい世界でのスタートに不安もありますが、お世話になっている方々を作業療法のちからで応援できるかもしれないということに何よりもワクワクしています。赤ちゃんからおじいちゃん・おばあちゃんまですべての世代の方が、その人の生活のなかで必要な「作業」をできる限り続けられるように、そして最期のときまでその人らしく暮らせるために、生活を支援するプロとして地域の方々に寄り添える作業療法士になりたいと思います。
文責:平川あかね




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