岳南朝日新聞8月掲載されました
- 母力
- 3 日前
- 読了時間: 4分
8月は佐野 沙保里が
【子育てを辛く感じているお母さんへ】をテーマに書きました。
以下より全文お読みいただけますので、ぜひ読んでみてください。

子育てを辛く感じているお母さんへ
40歳の挑戦
40歳になったのを機に、マラソンを始めました。20歳の時にホノルルマラソンを走ったことを最後にマラソンから遠ざかっていたのですが、そんな私がまた走ろうと思ったきっかけは、小学校に入った息子がバスケットボールを始めたことです。この前までは幼稚園生だった息子が、ゴールを決めて大喜びしている姿や、時に悔し涙を流しながらも成長していく姿は、目を見張るものがありました。私もこの子に恥じないよう、自分の好きなこと、あきらめていたことをもう一度頑張りたいなと思えたのです。
いざ始めてみたものの、何せ20年ぶりのマラソン。最初は1キロも走れませんでした。ですが、自分のペースでゆっくりと走っていくうちに、2キロ、3キロと徐々に距離を伸ばして走れるようになりました。そして昨年「ふじかわキウイマラソン」の10キロに出場、なんと完走することができたのです。そのことは、私にとっては大きな一歩でした。
「最高に楽しい地獄」とは?!
そして41歳になった今年は「伊豆稲取キンメマラソン」に出場しました。私の出場したマラソンコースは、全長10キロでアップダウンの坂道が多く、キャッチフレーズは「最高に楽しい地獄にようこそ」。スタート直後からいきなりの登り坂、下り坂の連続で、走り切れるのか、なぜ私はこんな大会にエントリーしてしまったのか・・と猛烈に後悔しました。しかし、コース沿道のお宅や商店の皆さんが出て来て下さり、「もうちょっとだよー」と各所で応援してくれるのです。エイドステーションも、伊豆名産のニューサマーオレンジの飲み物やゼリーがあるなど至れり尽くせり。ゴール地点には地元の伊豆稲取温泉の女将さん達からの冷たいおしぼりのサービス、金目鯛のお味噌汁の振る舞いもあり、素晴らしいマラソン大会でした。
温かい応援のおかげでこちらもなんとか完走でき、何よりゴール地点で家族が「ママがんばれー!」と待っていてくれたのがとても嬉しかったです。普段は、家族のサポート役としてみんなを応援する立場にあるとばかり思っていた私が応援してもらう立場になるなんて、思ってもみないことでした。「何歳になってもやればできるんだ!」ということを毎回感じることができるマラソン大会に、これからもチャレンジしていきたいと思っています。華々しくゴールする姿だけでなく、練習を怠けてできなかったり、挫折したりする姿も含めて、子どもたちに見てもらって何か感じて欲しいなと思います。
夜明けが来ないような気がして辛かった日
我が子がまだ赤ちゃんだった頃、おむつ替えしても授乳をしても泣きやまない真夜中、世界で我が子と二人きりになってしまったような孤独感と、一生この夜は明けないのではと絶望的な気持ちになったことがありました。私は仕事も辞めて、住んだことのないこの土地に根を下ろして、知り合いもいない中、これから子育てしていかなければならない・・子育てに精いっぱいで仕事も自分の好きだったことすら思い出せない。夜になるとネガティブな思考の沼に沈んでいくような感覚がありました。
実母の「しんどいのは今だけだよ」、「育児期間はあっという間だよ」という言葉も、今となっては本当にその通りだなと身をもって感じているのですが、当時は全く素直に受け止められませんでした。
10年前の私へ、そして今育児がつらいと感じるお母さんへ
けれど今、10年前の私に伝えたい。「あなたは10年後、マラソンをして、楽しくいろいろな大会に出ているよ。自分のキャリアはゼロになったと思っているけど、今までやってきたことは何一つ無駄にはなっていないよ。心配することもあるけれど、子どもたちは心配をよそに元気に大きくなっていくよ。だから大丈夫だよ」と。
そして今、子育てが辛いなと感じているお母さんに伝えたい。世の中にはあなたの力になりたいと思っている人たちがたくさんいます。私もそう思って今働いています。私も10年前、絶望した真夜中があった一方で、たくさんの人に助けてもらいながら育児をしてきました。どうか辛いときに家族や行政や母力向上委員会のような支援団体を頼ってほしいと思います。見渡してみると味方はたくさんいますよ、と。どうか一人でも多くの子育て中の方に届きますように。
文責 佐野 沙保里
コメント